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「全銀システム」と「日銀ネット」は具体的にどうやって連携しているか ー「為替」とは何か?(3)

「為替」の基本的な仕組みについて書いてきましたが、最後に、もう少し具体的に「銀行」と「日銀」のあいだで何がおこなわれているのかを書きます。

 

「全銀システム」と「日銀ネット」

まず、こちらの図をごらんください。

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「電算センター」とは、銀行の預金口座のデータなどを管理しているサーバが置かれているところです。その銀行の各支店や本店がここにつながっています。

「全銀システム」とは、これまでに書いてきた 内国為替外国為替 の取引を(下記の日銀ネットと連携して)おこなうための仕組みです。全銀ネットという会社が運営しています。全銀センターというところにサーバがあり、各銀行の「電算センター」とつながっています。

「日銀ネット」とは、日銀の電算センター(日銀当座預金や政府預金の口座、国債の口座のデータなどを管理しているサーバがある)と日銀の各支店や本店(この図には書かれていません)がつながるネットワークです。「全銀システム」ともつながっています。

 

実際の取引

たとえば、ある人がA銀行に行ってATMを操作し、自分の口座のお金をB銀行の口座に送金したとします。すると、送金の指示(データ)がA銀行の「電算センター」に送られます。

A銀行の電算センターでは、まず、自分の口座の残高が差し引かれます。そしてこの送金の指示のデータを、自行あてか他行あてかに分別します。自行あての場合は、その口座に入金して処理を終わります。他行あての場合は、これを「全銀システム」に送ります。*1

「全銀システム」に送られた場合、このデータはB銀行の「電算センター」に送られ*2、B銀行の口座にお金が入金されます。

「全銀システム」ではこのとき同時に、このデータから、「(為替取引で立て替えられた分を支払うために)日銀当座預金の口座間で、A銀行からB銀行にいくら送金するか」の情報を取得します。

この情報はすぐには処理されず、1日のうちのある時点(午後4時15分)までためられて、まとめて処理されます。

この処理については、これまでの説明どおりに考えると、日銀当座預金の口座間の「A銀行からB銀行への送金」の合計と、「B銀行からA銀行への送金」の合計の差額を、多い方から少ない方に送金してやる(振り替える)、ということになると思うのですが、実際にはそういったことはおこなわれていません。(世の中にA銀行、B銀行の2行しかない場合はそうなると思うのですが)

例えば、上記のような計算をした結果、「日銀当座預金の口座間で、A銀行からB銀行に1万円送金する」ことになったとします。

しかし、ここにC銀行も加えた3行の日銀当座預金間の送金が、次のようになったとすると、

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この場合、B銀行は1万円入ってきて1万円出て行くので、金額の変動は0です。わざわざお金を入れたり出したりする作業はムダです。

というわけで、実際の処理では、A銀行は2万円入ってきて1万円出ていくので「+1万円」、B銀行はすでに書いたように「0円」、C銀行は1万円入ってきて2万円出ていくので「ー1万円」というようにあらかじめ計算をして、それぞれの金額分だけ変更するように「日銀ネット」に指示を送ります。

 

補足

このように、1件1件の金額をそのつど振り替えるのではなく、データをある時点までためて、すべての銀行の取引をまとめて計算し、正味の金額を出して振り替えるやり方を「時点ネット決済」といいます。

これに対して、1件1件の金額をそのつど振り替えるやり方を「即時グロス決済」といいます。現在、民間の為替取引のうち1億円以上の送金では「即時グロス決済」がおこなわれています。「即時グロス決済」の割合は、件数的には全体の1%未満と少ないですが、金額的には全体の7割ほどとなっているようです。


間違いがあれば、指摘していただけると嬉しいです。


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記事一覧

*1:この際、データは全銀システムのフォーマットに変換されます。

*2:ここでこのデータは、B銀行のシステムのフォーマットに変換されます