根っこが知りたい

経済などの「なぜ」「どうして」を突きつめて考えるブログです。

“消費の限界” はどこか?

実は、すでに “消費の限界” なのだと思います。とは言っても、ここで言う “消費の限界” とは「そこに至ったらピタッと消費が増えなくなる」といったものではありません。これについて、以下で説明します。

 

まず、これは “時間の限界” による “消費の限界” です。だれにとっても1日は24時間しかありません。そのなかで買える商品(モノやサービス)の数には限界があります。これまで、時代とともに一人の人間が買う商品の数は増え続けてきましたが、これをどこまでも増やし続けるわけにはいかないはずです。


今から40年ほど前、僕が子供だった頃は、今ほど商品の種類がありませんでした。時間もまだたくさんあった気がします。

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しかし時代とともに商品の種類は増えていきました。

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商品は、1つ買うのにも「選ぶ時間」「買う時間」が必要です。しかしそれだけでなく、本やゲームやテレビのように、それ自体が長く時間を使わせるものもあります。商品の種類が増えるにつれて、時間も無くなっていきました。

そして、商品の種類が増えるということは「情報が増える」ということでもありますが、

90年代になって、インターネットが登場します。


時代とともにネット上の情報は増え続け、ホームページやブログなどの記事を読む、掲示板に書き込みをする、動画を見る、など消費者がネットを利用する時間も増えていきました。(IT企業によるネット関係の商品(サービス)も増えていきました)

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商品のライバルは、増え続けるほかの商品だけではありません。時間を使わせるもの全てが、互いに時間を奪い合うライバルです。

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いつからか出版不況と言われるようになり、以前ほど本が読まれなくなりました。テレビも視聴率を落としています。CDも売れなくなりました。

現在では、時間を必要とする全てのものにとって、もちろん “消費” にとっても、もう十分な時間は無いのではないでしょうか。つまり、すでに “消費の限界” なのではないかと思うのです。

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とはいえ、「ここが消費の限界だ」という線を引くことはできません。

時間に “24時間” という絶対的な限界があるとはいえ、「働く時間」「寝る時間」「食べる時間」「移動する時間」「お風呂に入る時間」「ぼーっとしている時間」などなどの時間を圧縮していけば、消費を増やすこともできるはずです。

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しかし、どこまで圧縮できるかを明確に言うことはできません。


つまり、この “限界” というのは、「この個数」というようにはっきりと線が引けて、それ以上商品が増えたら買えない、といった性質のものではないのだと思います。


でも、「それではダメだ。どこが限界かをはっきり言えなければ、限界があるとは言えない」と言う人がいるかもしれません。

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しかし、

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「失われた20年」といわれる長期の不況に入る前とあとの違いは、「まだ押し入れに余裕のあった時代」と「押し入れがいっぱいになって、隙間を作っては詰め込むようになった時代」の違いではないでしょうか。つまり、“消費の限界” に達したのは長期にわたる不況に入る前(もしかすると80年代にはすでに)のことで、それ以降は、時間の経過とともにその限界の度合いが増していって現在に至っている、ということではないかと思います。

いまの経済は「一人あたりの生産量」が増え続けることで(つまり「一人あたりの消費量」が増え続けることで)うまく回ってきたのだと思います。しかし、「一人あたりの消費量」には限界があります。

もちろん、まだ消費は増えると思います。特に、いま生活が苦しい人の消費は増える余地があると思うし、これを増やすことこそが「失われた20年」などといわれる現在の経済の問題を解消することなのだと思います。しかし、「世の中のお金の量を増やして、世の中全体で売り買いを活発にしてもらおう(一人あたりの生産量・消費量を増やそう)」というこれまでのやり方では、うまくいかないのではないでしょうか?



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