今の経済のしくみは物理的に限界
「今の経済のしくみは物理的に限界」だと思っているのですが、その理由を説明させてください。
「商品の数が増え続けないと成り立たない」しくみ
効率化は、同じ数の商品(モノやサービス)を生産するために必要な人手を減らします。そして、そこで仕事を失った人がふたたび仕事を始めると、商品の数が増える ことになります。まずはこれについて説明します。
分かりやすくするために、現在の日本を10人のひとが住んでいる世界だと考えてみます。その10人は働いていて、10個の商品を作っているとします。
効率化で5人の仕事がなくなったとします。
人が働く理由には「働くことに生きがいを感じる」とか「こんな商品を作りたい」などさまざまあるでしょうが、いずれにしろ、今の経済のしくみでは 生活するためには「お金」が必要で、「お金」を手に入れるためには「仕事」をしなければならない ので、仕事をなくした5人はふたたび仕事をはじめます。
すると商品の 総数 が増えることになります。つまり、効率化で仕事を失ったひとがふたたび仕事をするためには商品の数(生産量)が増えないといけないということです。
しかし、仕事をなくした人が同じ商品を生産する仕事を始めても、その商品の需要はすでに飽和しています(だからこそ、効率化によって仕事がなくなりました)。仮にそれがうまくいったとしても商品の数は増えず、ほかの誰かが同じくらい仕事を失うのではないでしょうか。つまり、仕事が生まれるためには「あたらしい商品」が作られなければならない ということだと思います。
すると商品の 種類 と 総数 が増えることになります。
とはいえ 現実には、すでに需要が飽和している商品を作る仕事に人や会社が参入する、といったことは当たり前のようにあります。そしてそこでは、かわりに誰かが仕事を失ったり、ほかの会社が潰れたり利益を減らしたり(それによって労働者の賃金が下がったり)しているのではないかと思います。
やはり、誰かがあたらしい商品をつくり、仕事が生まれる必要があります。実際に、そうして仕事が生まれているはずです。
もちろん、既存の商品も、なんだかの理由で需要が増えて生産量が増える場合があると思います。そこで生まれる仕事もあるはずです。しかし、10人のひとが住む世界で需要のある人が8人いて、それが10人に増えたとしても、それ以上にはなりません。生産・供給能力が十分に高くなった現在では、すぐに供給が需要に追いついて価格競争になり効率化がはじまります。
話を戻します。
効率化で仕事がなくなっていく一方で、
あらたに仕事は生まれ、商品は 種類を増やしながらその総数を増やしていかなければならない ということになります。
が… 現実には、そううまくはいきません。
なぜ行き詰まるのか
この世界の住人は10人ですが、最初は一人あたりの生産量が1個だったのが、2個になり、4個になりました。これはつまり「一人あたりの生産量が増えていく」ということです。効率化は常におこなわれて仕事はなくなり続けるので、一方であらたな商品が作られて仕事が生まれ続け、一人あたりの生産量が増え続けなければならない、ということになります。ところが…
この10人は「生産者」であると同時に「消費者」でもあります。
基本的に企業は、買われない商品を作るわけにはいきません(ある程度の売れ残りはあるでしょうが)。消費量が増えないのに生産量だけが増え続ける、といったことは起きません。(それでは経営が成り立ちません)
つまり、「一人あたりの生産量が増え続ける」のであれば「一人あたりの消費量も増え続ける」必要があります。
しかし、「一人あたりの消費量を増やし続ける」ことはどこまでできるでしょう?
「一人あたりの消費量を増やし続ける」ということは、例えば、ある人が1日に買う商品の数を今日は10個、明日は11個、明後日は12個…50個…100個…1000個…1万個と、延々と増やし続けるということです。(大袈裟に言うと)
そんなことは不可能です。やはり 消費には限界がある はずです。
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