根っこが知りたい

経済などの「なぜ」「どうして」を突きつめて考えるブログです。

「経済成長」にはもはや意味がない

「経済が成長する」という言葉は、よく聞くありふれた言葉です。でも、分かっているようでいて「具体的にはどういうこと?」と聞かれると、答えに困る言葉のひとつではないでしょうか?


なんの補足もなければ、「実質GDPが増えること」を指して「経済が成長する」と言っています。実質GDPが前年より5%増えれば、“経済成長率5%” ということになります。*1

では「実質GDPが増える」とは、どういうことでしょう?

「実質」というのもわりとよく聞く言葉ですが、経済の世界では「物価の変動を考慮したもの」という意味になります。(それを考慮しない、そのままの値を名目と言います)

例えば、毎日カボチャを1個だけ買っている人がいるとします。きのう100円だったカボチャが今日200円になったとすると、その人の今日の名目の消費金額は200円ですが、実質の消費金額は100円です。

実質の値を出すときには、基準となる時点を決めて、その時点からの物価の変動分を除く(あるいは加える)ことになります。上の例ではきのうを基準の時点にしています。

ちょっとややこしいですが、簡単に言うと、「もし物価が変わってなかったらいくらになるか」実質の値です。

カボチャの値段が日々、100円、200円、145円、170円、などと変わっていったとしても、買っている数が毎日1個なら、最初の日を基準にした実質の消費金額は100円、100円、100円、100円、ということになります。(これは、実質の消費金額が増えていれば消費量(買っている個数)も増えている、ということなのですが…)


ではGDPとは何かというと、国内総生産といわれるもので、ネットで調べていただくと「ある一定期間内の国内の付加価値の総額」などと書かれていると思います。

「付加価値」とは何かというと、例えばパン屋さんが、卵10円、小麦粉20円でパンを作り、100円で売ったとすると、製品の値段からかかった経費を引いたもの、この場合でいうと70円が「付加価値」の額ということになります。

GDPとは、一定期間(例えば1年間)の、国内の、このような「付加価値」を、すべて足し合わせたものです。(〇〇兆円、といったような金額であらわされます)

例えば、ある年の日本国内で生産された製品の数が、前年とまったく同じだった場合、GDPの金額はどうなるでしょう?

物価が上がっていれば上がるでしょうし、下がっていれば下がることになります。ではこの場合、実質のGDPの金額はどうなるでしょう?

実質とは「物価が変わらなかった場合の値」なので、前年とまったく同じ金額になります。

これはどういうことかというと、「実質GDPが増えていれば、生産量も増えている」と考えることができる、ということです。


話が長くなりましたが、結局「経済が成長する」ということは「実質GDPが増える」ということで、それはつまり「生産量が増える」ということです。


というわけで、これでやっと記事のタイトルの話ができます。

人口が増えなくなっている今の日本で「生産量が増える」ということは、「一人あたりの生産量が増える」ということで、それは基本的には「一人あたりの消費量が増える」ということです。

これまで書いてきたように、消費には限界があります。


商品はすでに買いきれないほどあります。大事なのは、その種類と、数と、品質が、(ある程度は新しく生まれるもの、なくなるものがあるなかで)維持されることで、これがどこまでも増え続ける(経済成長する)ことではないと思います。もちろん、輸出が増えることで生産量が増える(経済成長する)のであればいいようにも思えます。現在がまさにそういった状態です。しかし、輸出される側の国にも消費の限界があるはずです(今はまだ余裕があるとしても)。


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*1:「実質の…」とか「名目の…」といった補足がなく、単に「経済成長」と書かれていれば、それは「実質の経済成長」を指します。